『小さな手袋』小沼丹

日々のささやかな移ろいの中で、眼にした草花、樹木、そして井伏鱒二木山捷平庄野潤三西条八十、チエホフら親しんだ先輩、知己たちについてのこの上ない鮮やかな素描。端正、精妙な、香り高い文章で綴られた自然と人をめぐる、比類なく優しい独得のユーモアに満ちた秀抜なエッセイ。

初めて小沼丹の随筆集を読んだ。
第一印象はなにやら内田百間に通じるものがある、ということ。さらりと書いていて、ユーモアがあって、淡白でいるようでその人、物に対するささやかな愛着が見え隠れする。
師匠である井伏鱒二に対するときも、尊敬一辺倒ではなく、弟子でなければ知りえないような巨匠の意外な素顔を隠すことなく書いてみるところとか。
年譜を見て知ったのだが、どうやら今私が住んでいるところとほど近いところに住んでいたようで、なにやらさらに親近感が増したりもした。